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遺産相続ケーススタディ

介護に尽くした「嫁」が報われない

介護に尽くしても、「お嫁さん」は相続できない!

介護した妻.JPG「はぁ~、私がしてきたことっていったいなんだったのかしら・・・」。兵庫県の専業主婦Mさんは、肩を落として、ため息をついた。

夫に先立たれてから3年後、今度は、同居していた夫の父親が寝たきりとなりました。父親には、亡くなった夫のほかにも、娘が2人いたのですが、遠方に嫁いでいたこともあり、自然とM子さんが義父の面倒を看ることになりました。
M子さんは、義父が亡くなるまで2年間、食事はもちろんのこと、入浴の世話や排泄にいたるまで、献身的に介護に尽くしました。
夫の姉たちは、「いつも大変ね・・・」と、口では言うものの、実際の介護はM子さんに任せきり。
そんなM子さんに、義父は、「すまないねえ、わしが死んだらこの家は、あんたのものだよ」と気遣いを見せてくれていました。

義父が旅立った後、今まで何もしてこなかった姉たちがやってきて、遺産分割の話を始めました。
「M子さん、この家は売ることにしたわ。評価額の2000万円の半分ずつを私たちでわけることにしたの。私たち、まだマイホームのローンや教育資金がかかって大変なのよ。あなたは、家賃を払うこともなくこの家で暮らしてきたんだし・・いいわよね?」

M子さんは、ビックリすると同時に、釈然としません。義父が言っていたことはなんだったのか・・・。

そもそも、「法定相続人」になれるのは、「配偶者」「子・孫」「父母・祖父母」「兄弟姉妹」の4種類です。
子どもの妻(お嫁さん)であるM子さんには、法律上、相続権がないのです。

もちろん、M子さんだって、遺産を目当てに介護をしてきたわけではありません。でも、このように全く苦労を認めてもらえない結果だと、とてもむなしい気持ちになるのではないでしょうか?

多くもらえるはず、は危険な思い込みです

高齢化社会が進むにつれ、介護はどの家庭にも起こり得る問題です。
親の介護で苦労した人が、遺産相続の場面になって、「こんなはずではなかった。納得できない」と悔しがるケースが増えてきています。
これは、法定相続人同士でも然り・・・です。

「私は介護に尽くしてきたのだから、遺産は多くもらえるはず。」というのは危険な思い込みです!
まず、相続は、法律上、介護問題など家庭の事情とは関係なく決まるということを肝に銘じておく必要があります。

死因贈与の条件

では、M子さんは、財産をもらうことはできないのでしょか?
原則として、相続人以外の人が相続財産を取得するには、遺言が必要です。
でも、口約束では遺言にはなりませんね。。。

ただし、M子さんの義父のように「死んだらあげる」という「死」を原因として財産を贈与する「死因贈与」であれば取得できる可能性があります。

死因贈与とは、贈与者の死亡を条件にその贈与契約の効力が生じるものです。
贈与とは、贈与者と財産をもらう人(受贈者)とが、「あげます」「もらいます」といった双方が合意したもの(契約)です。

従って、「自分が死んだら財産をあげる」というのは贈与の意思を示したことになります。
一方、受贈者も財産をもらう意思表示をすれば、契約が成立したことになるのです。
そして、その効力が生じるのは、贈与者が死亡したときとなります。
ただし、死因贈与が認められるかどうか(法務局で名義変更できるかどうか)には、次の2つの条件があります。

なお、この死因贈与での取得は、贈与税ではなく相続税の対象となります

条件1: 証人がいるかどうか?
まず、証人がいるかどうかです。
もらう人以外に「死んだらあげる」ということを立証できる人がいれば、この条件はクリアです。
親戚がそう聞いていた、もしくは親しい不動産屋さんがそう聞いていたと言うのでも構いません。
もちろん口約束ではなく、書面が出てくればそれも立証の材料になります。
だし、死因贈与は、契約ですから贈与者と受贈者の双方の捺印がなければいけません。ちなみに、遺言は、遺言者が財産を誰に相続させるという一方的なものであるため、遺言者の捺印だけでよいのです。

条件2: 相続人全員の承諾
ただし、証人だけでは死因贈与が認められません。
もう一つの条件は、相続人全員の承諾を得ることです。これは、名義変更の際、相続人になる人の実印と印鑑証明が必要であるため、承諾が不可欠なのです。

従って、このケースでも次の2つの条件が整えば贈与を受けることができます(死因贈与が成立)。
1)お義父さんが、「死んだらあげる」と言っていることを親戚や親しい人が立証してくれること(又はお義父さんとM子さんの双方の捺印がある書面が存在すること)
2)相続人全員(この場合は、2人の娘)の了承が得られること

相続人以外の人に財産を残すには遺言書がベスト!

いかがでしたか?
この場合、M子さんが、「死因贈与」で財産をもらうことは、なかなかハードルが高そうですね。
やはり、法定相続人でない者が遺産をもらうには、口約束ではなく、遺言書がベストといえます。
遺言は法定相続に優先するからです。

本来なら、介護を受ける夫の親が、自主的に子どもの妻にこうした気配りをして、遺言書を書いておくべきです。夫の両親に「自分に財産を残す遺言を書いて」とは言いにくいものですからね。
夫が生きていたら、夫の口から両親に、「考えておいてほしい」と一言伝えておくのことも選択肢のひとつです。

遺言を書いてもらう場合に、注意しておきたいのは「遺留分」という概念です。
法定相続人には、遺言でも侵害できない最低限の権利が存在します。(遺留分の割合は→こちら

だから、遺言で子どもの相続割合をゼロにする!と書かれていても、その子どもによる虐待など特別な理由がない場合は遺留分を主張できます。

介護などで尽くしたことを反映した遺言書を書いてもらう場合も、他の相続人の遺留分を侵害しない範囲にしておかないと、トラブルのもとになりますので、注意してくださいね。

 

遺言書の書き方や、生前対策について、御不明な点がありましたら、どうぞお気軽にご相談下さい!

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